Column ー 岡田コラム

2006.09.29

海を見つめる急須。
JR浜松町駅のすぐ近くに浜離宮恩賜庭園がある。
昔の人はすごい。
海の際に庭園をつくり、その中に海水を導く池をつくって、
潮の満ち干によって変わる池の趣を楽しんできた。
そして徳川家の将軍は、気が向くと、
気心の知れた大名を海辺の茶屋に招き、茶を点てて接待していたのだ。
海に向かって障子が開け放たれている。
潮の香りを浴びながら、じっと、海を見つめる。
ただそれだけで、いやただそれだけが、

いいなあ。

そういう席にあこがれて、海辺の茶のための急須をつくった。
自由工房の釜の達人、熊さんは、焼きあがった急須を見て、即、
ヤドカリみたいだと言い放った。
私としては、数年前、沖縄の海で出会った、
女神のような美しい貝のつもりでつくったのだが…。
そうか、動き出す貝か、旅をする貝か、と改めて思い、
ヤドカリ急須の呼び名に至極満足したのである。
いつの日か海を見つめる家を持ったとき、この急須は、
わが家の生活必需品になるだろう。

copy&photo/Kunitaka Okada design/Junichi Kitagawa